死の薔薇 〜病室〜 01
歌が聞こえた。
子供の声だ。
風に乗ってどこからともなく聞こえる声。
微かな音であるのにやけに響いて聞こえた。

 石造りの堅牢な建物は一見古城のように見える。しかし実態は伝染病の患者を隔離するためのサナトリウムだ。
中に入ると病院特有のひんやりとした空気が肌を刺す。
私の姿を見ると、看護婦が張り付いたような笑顔を浮かべた。

「お久しぶりですね、榊様。弟さんのお見舞いですか?」

「ええ。」

前に来たときも同じセリフを聞いたな。そう思いながら口の両端をあげて答える。
他人に好印象を与える顔。作るのはとても簡単なことだ。

エントランスからまっすぐに地下を目指す。
弟の病室は地下の奥深くにあり、広い建物の中をずいぶん歩くことになる。
しかし、院内では滅多に人とすれ違うことはない。
地下は主に検査室が割り振られているせいもあるが、入院患者の数が驚くほど少ないのだ。
それは私自身の意向でもあった。
この病院は、私たちの一族が所有する土地に建てられていて、実質的な管理も任されているようなもので、病院内の経営・体制についても口が効く。
弟の入院を境に、少しずつ人払いをしてきたのだ。
それは、弟…、柊が一般的な伝染病患者ではないからに他ならなかった。

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